士業事務所の採用は、一般企業の中途採用とは読まれ方が違います。
一般企業では「何を成し遂げたか」が中心になりますが、士業事務所が知りたいのは「入ったその日から、何をどれくらい任せられるか」です。人数の少ない職場で、教える余力が限られているためです。
だから職務経歴書も、成果の物語ではなく、担当の実態がそのまま分かる書き方のほうが通ります。
経験者が書くべき3つ
① 担当件数
「何社を担当していたか」が、最初に見られます。
- 顧問先の件数(月次で訪問・面談していた社数)
- 決算の件数(年間何件を、どこまで自分で作ったか)
- 給与計算の件数(何社・延べ何名分か)
「担当していました」だけでは、月5社なのか月40社なのか分かりません。件数が書かれていないと、読む側は少ないほうに見積もります。
② 顧問先の規模と業種
同じ「担当」でも、年商1,000万円の個人事業と、従業員100名の法人では仕事の中身が違います。
- 顧問先の売上規模の帯(例:年商3,000万〜3億円が中心)
- 業種の傾向(建設・医療・飲食・不動産など)
- 法人と個人事業の比率
業種は、事務所によっては採用の決め手になります。 建設業に強い事務所は建設業の経験者を、医療系に強い事務所は医療法人の経験者を探しています。
③ 使っていたソフトと、どこまで触れたか
見落とされやすいのに、実務で最も効く情報です。
- 会計ソフト・税務申告ソフトの名称
- 給与計算ソフト、社会保険の電子申請の環境
- クラウド型を使っていたか、インストール型か
ソフトが同じなら、入所後の立ち上がりが数週間ちがいます。 事務所側もそれを分かっているので、ここは必ず書いてください。
さらに一段深く、「自分で設定まで作れるのか、入力ができるのか」を書き分けると精度が上がります。
「どこまで自分でやったか」を必ず添える
士業の実務は、同じ作業名でも担当範囲が大きく違います。
| 作業名 | 幅の広さ |
|---|---|
| 決算 | 資料整理だけ/申告書のドラフトまで/完成させて所長のチェックのみ |
| 就業規則 | ひな型の修正/一から設計して労基署へ届出まで |
| 相続 | 資料集めの補助/申告書の作成/お客様との面談も担当 |
「決算を担当」とだけ書くと、いちばん狭い意味で読まれます。 どこからどこまでを自分がやったのかを、一行足してください。
未経験から応募する場合
未経験者が「未経験ですが意欲があります」と書いても、判断材料になりません。翻訳が要ります。
- 数字を扱った経験:請求・入金管理・経費精算・売上集計など、経理に近い業務は必ず書く
- お客様と直接やりとりした経験:士業事務所の仕事は対人が半分です。営業・接客・窓口はそのまま評価されます
- 期限のある業務を回した経験:士業は期限が動かせない仕事です。締切管理の経験は効きます
- 勉強の進捗:科目合格、受験予定、勉強時間の確保のしかた
「資格をどう扱われるか」は事務所によって幅があります。科目合格の扱いも、事務所の方針で変わります。
志望動機は「なぜこの事務所か」まで書く
士業事務所の志望動機で多いのが、次の書き方です。
会計を通じて中小企業を支援したいと考え、貴事務所を志望しました。
これは、どの事務所にも出せる文章です。読む側もそれが分かっています。
書き足すべきなのは次の2点です。
1. その事務所を選んだ理由(特化している業種、規模、扱っている業務範囲、代表の方針など、公開されている情報から) 2. 入ったあと何をしたいか(担当を持ちたい/制度設計に関わりたい/独立を見据えている、など)
2つめは、正直に書いて構いません。独立志向を隠して入って、数年で辞めるほうが双方の損失が大きいからです。独立前提の採用を明示している事務所もあります。
書かないほうがよいこと
- 顧問先が特定できる情報(社名、業種と地域を組み合わせた具体的な記述)。守秘の意識を疑われます
- 前職の批判。小さい業界なので、伝わることがあります
- 書けることを盛る。入所後に確実に分かります
まとめ
1. 件数・規模・ソフトの3つを必ず書く 2. 作業名には「どこまで自分でやったか」を添える 3. 未経験は「意欲」ではなく「近い経験の翻訳」で書く 4. 志望動機は「なぜこの事務所か」まで
士業事務所の採用担当は、多くの場合、所長や番頭役の職員です。採用の専門家ではなく、実務の人が読みます。 だから、実務の言葉で書いてあるほうが伝わります。
- 面接で実際に聞かれることは 士業事務所の面接で実際に聞かれること にまとめています。
- 未経験からの転職については 未経験から士業事務所へ転職できるのか をどうぞ。
- 求人票の読み方は 士業の転職は4つの型しかない、給与の決まり方は 士業事務所の給料は、どうやって決まっているのか が参考になります。

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