初めて士業に相談する人が、いちばん多く感じるのは「思ったより何も決まらなかった」です。
これは事務所の質の問題ではないことがほとんどです。初回相談は、問題を解決する場ではなく、引き受けられる案件かどうかを互いに確かめる場だからです。
ここがずれていると、1時間話して、次に何をするかが決まらないまま終わります。 逆に、この前提で行けば30分でも足ります。
初回相談で実際に決まること
| 決まること | 決まらないこと |
|---|---|
| その案件を扱えるか(分野・期限・利益相反) | 結論そのもの |
| 誰が担当するか | 細かい書類の作り方 |
| 費用のおおよその範囲と内訳の考え方 | 確定した金額(資料を見ないと出ません) |
| 次に何を用意するか | 相手方がどう出るか |
右側は、資料を見てからでないと答えられないものです。相談の場で「持ち帰って確認します」と言われるのは、慎重な仕事の進め方であって、はぐらかされているわけではありません。
持っていく5つ
用意の差が、そのまま相談の中身の差になります。資料が無い相談は、一般論しか返ってきません。
1. 時系列のメモ(A4で1枚)
いつ、何があったか。日付と出来事だけで構いません。感情や評価を書くと、かえって事実が埋もれます。この1枚があるだけで、聞き取りの時間が半分になります。
2. 関係者が分かるもの
相手方、取引先、家族関係、株主構成など、案件によって違います。士業には利益相反の確認義務があるため、相手方の名前は早い段階で必要になります。ここを伏せたまま進めると、後から受任できなくなることがあります。
3. 契約書・通知書・届出の控え
原本は持ち出さず、コピーか写真で構いません。 届いた封筒がある場合は、消印の日付も撮っておきます。期限の起算点になることがあります。
4. 数字が分かる資料
決算書、給与台帳、請求書、通帳の該当ページなど。「だいたい◯百万円くらい」では、費用も方針も見積もれません。
5. 自分がどうしたいか(1行)
「穏便に終わらせたい」「期限に間に合えばよい」「金額よりも早さ」。ここが決まっていないと、士業側は選択肢を並べることしかできません。 並べられた選択肢を前に黙ってしまうのが、初回相談でいちばん多い詰まり方です。
その場で必ず聞く3つ
聞きにくいと感じる項目ほど、後で効きます。どれも、聞かれ慣れている質問です。
1. 費用は「報酬」と「実費」でいくらか。 登録免許税・印紙代・証明書の取得費用などは、報酬とは別に必ずかかります。分け方の考え方は行政書士に頼むといくらかかるのかで整理しています 2. この件を誰が担当するか。 面談した有資格者が担当するのか、所内の担当者が付くのか。規模の大きい事務所ほど、ここが分かれます 3. 期限とスケジュール。 「いつまでに何を出せば、いつ終わるか」。先に期限がある案件(申告・登記・申請)では、これが最優先です
<strong>答えにくそうにされた項目があれば、それ自体が情報です。</strong> 費用の内訳を説明できない事務所は、見積もりの段階でも説明しません。
「無料相談」で答えが出ないのは、普通のこと
無料相談には、たいてい時間の上限と扱う範囲が決められています。
- 時間が区切られている(30分・1時間など)
- その場で結論を出さず、持ち帰りになる
- 書類の作成や調査は範囲外(ここから有料になる)
無料の範囲で全部やってもらおうとすると、どちらにとっても中途半端になります。 無料相談は「この事務所に頼むかどうかを決めるための時間」と考えるほうが、使い方として正確です。事務所の選び方そのものは士業事務所の選び方にまとめています。
相談先が違っていたときは、断られるのではなく「回される」
士業には、法律で扱える業務の範囲が定められています。相談した相手が扱えない内容であれば、他の士業を案内されます。 これは断られたのとは違います。
- 登記が必要 → 司法書士
- 税務の申告・税額の判断 → 税理士
- 労働・社会保険の手続き → 社会保険労務士
- 許認可の申請書類 → 行政書士
- 争いになっている/相手と交渉が要る → 弁護士
いちばん最後が重要です。すでに揉めている案件は、他の士業では代理できません。 早い段階で行き先が分かるだけでも、初回相談の価値はあります。断られたときの動き方は行政書士に依頼を断られたら、次は誰に持っていくのかで扱っています。
相談のタイミングそのものを迷っているなら
「まだ早いのではないか」と考えて、結果的に遅れるのがよくある流れです。期限のある手続きは、遅れると選べる方法が減ります。 顧問を頼む時期の考え方は税理士に頼むのはいつからかにまとめました。
よくある質問
Q. 手ぶらで行ってはいけませんか。 A. いけなくはありませんが、返ってくるのは一般論だけになります。 時系列のメモ1枚でも、内容はかなり変わります。
Q. 複数の事務所に同時に相談してよいですか。 A. 相談の段階で複数に当たること自体は一般に行われています。ただし依頼(受任)後は、事務所側の確認事項が増えるため、切り替えるなら早いほうが簡単です。
Q. 相談したことは外に漏れませんか。 A. 士業には法律上の守秘義務が定められています。不安がある場合は、初回の場で守秘の範囲を確認して構いません。
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この記事は一般的な整理であり、個別の法律・税務の判断を示すものではありません。 取扱い業務の範囲や費用は事務所ごとに異なります。制度の内容は各士業の全国組織(日本税理士会連合会・全国社会保険労務士会連合会・日本司法書士会連合会・日本行政書士会連合会・日本弁護士連合会)および所管官庁の公表資料をご確認ください。

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