だから質問も、能力を測るものより「この人と長く一緒に働けるか」「任せて事故が起きないか」を確かめるものに寄ります。聞かれる質問は、突き詰めると6種類しかありません。何を確かめられているのかが分かれば、答えは自分の中から出てきます。この記事では、その6分類と、逆質問で確認しておくべきこと、そして本来は聞かれないはずの事項を整理します。
一般企業の面接と、どこが違うのか
| 見る点 | 規模の大きい企業 | 士業事務所 |
|---|---|---|
| 面接する人 | 人事担当者。現場は後の段階 | 最初から所長(資格者本人)のことが多い |
| 回数 | 複数回・段階的 | 1〜2回で決まることが多い |
| 重視されるもの | ポテンシャル・組織との適合 | すぐ動けるか・続くか・情報を守れるか |
| 質問の性質 | 整った設問。想定問答が通用する | その場の会話から掘られる |
| 不合格の理由 | 相対評価 | 「うちの規模に合わない」という判断もある |
とくに1つ目が大きい。目の前にいるのが、入所後に毎日一緒に働く人そのものです。人事の評価表を通らずに、その人の実感で決まります。だから「うまく答える」より「言っていることが本当らしい」ほうが効きます。
聞かれることは6種類に分けられる
① なぜこの業界か——動機の一貫性
「なぜ士業事務所を選んだのですか」「なぜ一般企業ではないのですか」。確かめられているのは志望度の高さではなく、話の筋が通っているかです。
- きっかけ→調べたこと→だから今ここにいる、の順で話す。きっかけは個人的な出来事でかまいません
- 「安定していそう」「手に職をつけたい」だけで止めない。嘘ではないぶん、誰にでも言えます
- 実際に調べた形跡を1つ入れる。どの士業が何を扱うかを自分の言葉で言えるかどうかで、印象が変わります(→士業の選び方)
② なぜこの事務所か——他と何が違うと思ったか
いちばん差がつく質問です。「どの事務所にも当てはまる答え」を返した時点で、聞いた側は次に進みます。
とはいえ、外から分かる情報は限られています。だから「ここが違うと思った」ではなく「ここを確かめたくて来た」と言うほうが正直で、かつ自然です。扱っている分野、規模、地域、募集の書き方——具体的な一点に触れられれば十分です。
③ 何ができるか——実務の解像度
経験者には具体的に、未経験者には「何ができないかを分かっているか」が問われます。
- 「前職ではどの業務をどこまで担当していましたか」
- 「使ったことのあるソフトは何ですか」
- 「無資格でできる範囲と、資格者でないとできない範囲の違いは分かりますか」
- 「分からないことが出てきたとき、どうしますか」
④ 続くか——定着の見込み
少人数の職場では、採用して半年で辞められることの打撃が大きい。だからここは必ず聞かれます。
「前職を辞めた理由は」「長く働けそうですか」「ご家庭の状況で通いにくい時期はありますか」。4つ目のような聞き方をされることがありますが、後述のとおり、本来は慎重に扱われるべき領域です。
⑤ 資格をどうするか——学習と両立の意思
これは士業事務所ならではの質問です。受験するのかしないのか、どちらでも構わない事務所と、はっきり希望がある事務所があります。
⑥ 忙しい時期に耐えられるか——繁忙期の話
士業には、業種ごとに決まった繁忙期があります。この時期の働き方に納得しているかどうかは、入所後の満足度をほぼ決めます。
「この時期は残業が出ますが大丈夫ですか」と聞かれたら、反射的に「大丈夫です」と答える前に、どのくらいなのかを聞いてください。答えづらい質問ではありません。年間の繁忙期の並びは士業の繁忙期カレンダーにまとめています。
逆質問で確認しておくこと
「何か質問はありますか」は、評価の場であると同時にこちらが確かめる唯一の機会です。少人数の職場ほど、入ってからでは動かせないことが多くあります。
- ① 入所後、最初の3か月は何を担当するか。具体的に答えられない事務所は、受け入れの設計がまだかもしれません
- ② 分からないときに誰に聞けるか。「所長が忙しくて聞けない」は、少人数の事務所で実際に起きます
- ③ 繁忙期の実際の働き方。何月に、どのくらいか
- ④ 前任者はどうしてこの席が空いたのか。答え方そのものが情報になります
- ⑤ 資格の勉強との両立について、事務所としての考え方。制度がなくても、方針が聞ければ十分です
本来は聞かれないはずのこと
ここは知っておいてください。採用選考は、応募者の適性と能力に基づいて行われるべきものとされています。本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項を選考の判断に用いることは、公正な採用選考の考え方に反するとされています。
- 本籍・出生地に関すること
- 家族の職業・続柄・地位・収入など、家族に関すること
- 住宅の状況や、生活環境・家庭環境に関すること
- 宗教、支持する政党、人生観・信条に関すること
- 尊敬する人物、購読する新聞・愛読書などに関すること
- 労働組合・学生運動など社会運動に関すること
これらは厚生労働省が「公正な採用選考をめざして」として広く周知している考え方にもとづくものです 要確認。事業主向けの啓発資料として毎年公表されています。
まとめ
- 士業事務所の面接は所長本人が最初から出てくることが多く、1〜2回で決まる
- 質問は①なぜ業界 ②なぜこの事務所 ③何ができるか ④続くか ⑤資格をどうするか ⑥繁忙期の6種類
- ③では「できないことを分かっているか」が見られている。資格者でなければできない範囲の理解は必須
- ⑤は取り繕わない。入所後に必ずずれる
- 逆質問では最初の3か月・聞ける相手・繁忙期・席が空いた理由・勉強との両立を確認する
- 本籍・家族・宗教・信条などは、本来選考の判断に用いるべきでないとされている事項
本記事の位置づけ:本記事は、士業事務所の採用選考について一般的な傾向を整理したものであり、特定の事務所の選考内容を示すものでも、採用の可否を判断するものでもありません。面接の進め方・質問内容は事務所ごとに大きく異なります。また、資格者でなければ行えない業務の範囲は士業ごとに法令で定められており、改正されることがあります。個別の判断は、必ずご自身で最新の情報をご確認ください。
掲載内容は当サイトが確認した時点のものです(確認日:2026-08-02)。
出典・参考
- 厚生労働省「公正な採用選考をめざして」(事業主向け啓発資料。応募者の適性・能力に基づく採用選考の考え方と、選考時に配慮すべき事項が示されています) 要確認=本項は資料名で参照しています。掲載URLは改定のたびに変わるため、公表元の該当ページで最新版をご確認ください

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