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会計事務所を辞めたいと思ったとき|理由の4つの型と、動く前に確かめておく5つのこと

繁忙期が終わるたびに、同じことを考える。求人サイトを開いては閉じる。「辞めたい」と思いながら、もう何年か経っている——会計事務所で働く方から、いちばんよく聞く状態です。

ここで大事なのは、辞めるかどうかを先に決めないことです。辞めたい理由には型があり、型によって「辞めれば解決するもの」と「移っても同じもの」に分かれます。そこを取り違えると、転職して半年後にまったく同じ気持ちになります。

辞めたい理由の4つの型

型①「量」——終わらない

繁忙期の残業、担当件数、期限の重なり。時間そのものが足りないという状態です。

  • 移れば変わる可能性が高い型です。ただし「会計事務所だから忙しい」のではなく「その事務所の人員配置と件数」の問題であることが多いので、次を選ぶときに同じ条件を踏まないことが肝心になります。
  • 見るべきは事務所の規模そのものではなく、一人あたりの担当件数です。事務所の規模と人数の見方にまとめています。

型②「人」——所長・上司・空気

閉じた人間関係は、事務所という職場で最も重くのしかかる要素です。少人数ゆえに逃げ場がありません。

  • 移れば変わる型です。ただし、次の事務所の人間関係は、入る前にはほとんど見えません。だからこそ面接で聞き方を工夫する必要があります(後述)。
  • ハラスメントに当たる状態であれば、それは「辞めたい」以前の問題です。記録を残し、外部の相談窓口を使ってください。

型③「中身」——このまま続けて何になるのか

記帳と申告の繰り返しで、専門性が積み上がっている実感がない。資格の勉強との両立も見えない。

  • これは「移れば解決する」とは限らない型です。同じ規模・同じ客層の事務所に移ると、仕事の中身はあまり変わりません。
  • 変えたいのが仕事の中身なら、変えるべきは事務所ではなく客層と業務領域です。資産税に強い事務所、上場企業を見る事務所、コンサル寄りの事務所——「会計事務所」という一語の中に、まったく違う仕事が入っています。

型④「条件」——給与・評価

働きぶりが評価に反映されない。資格を取っても給与が変わらない。

  • これも移れば変わる型ですが、次の事務所の給与の決まり方を確認しないと、同じことが起きます。固定なのか、資格手当なのか、売上連動なのか。求人票のどこを見るかは士業事務所の給料の決まり方に整理しました。

まず、自分がどの型かを言葉にする

紙に一行で書いてみてください。「私は〇〇が理由で辞めたい」。

書けないときは、たいてい複数の型が重なっています。その場合は、「これさえ解決すれば、あと3年は続けられる」ものを1つ選ぶ。それが本当の理由です。

理由がはっきりしないまま動くと、次を選ぶ基準もはっきりしません。求人を見る前に、ここに時間を使う価値があります。

動く前に確かめておく5つのこと

1. 繁忙期のピークで判断していないか

3月と5月に「辞めたい」と思うのは、ほぼ全員です。そこで出した結論は、体力の問題であって、仕事の問題ではないことがあります。

繁忙期が明けて2週間経ってから、もう一度同じことを考えてください。それでも同じなら本物です。

2. 事務所を変えずに変えられる部分がないか

担当の入れ替え、業務分担の見直し、勤務時間の相談。言ってみたら通った、ということは実際にあります。

「どうせ無理だ」と思って一度も言っていないなら、辞める前に一度だけ言ってみる価値はあります。断られたら、それも判断材料になります。

3. 資格の勉強との兼ね合い

受験を続けているなら、時期は大きな要素です。転職の直後は、新しい業務を覚える負荷がかかります。

  • 試験の直前期に移らない
  • 逆に、勉強時間が取れないことが辞めたい理由なら、移ることが勉強のための手段になります

どちらなのかを、はっきりさせてから動いてください。

4. 担当先への引き継ぎ

会計事務所の仕事は担当が顧問先に紐づきます。引き継ぎには時間がかかり、辞め方はその後の評判に残ります。

士業の世界は思ったより狭く、次の職場に前職の話が伝わることは珍しくありません。円満に出ることは、自分のためでもあります。

5. 就業規則を読む

退職の申し出の時期、有給の扱い、引き継ぎの規定。入社時にもらったきり読んでいない方がほとんどです。

まずは自分の事務所の就業規則を確認してください。判断に迷う点があれば、事務所の外の専門家や公的な相談窓口に相談するのが確実です。

次を選ぶときに、面接で聞くこと

型ごとに、聞くべきことが違います。

辞めたい型面接で必ず聞く
① 量一人あたりの担当件数/繁忙期の実際の退勤時間/直近の残業実績
② 人直近3年で辞めた人の人数と理由/所長と職員の距離感/誰が指導するか
③ 中身顧客の業種と規模/記帳代行の比率/入って3年で任される範囲
④ 条件給与の決まり方(固定・手当・連動)/評価のタイミング/資格取得の扱い

「残業はどのくらいですか」と聞くと、たいてい「繁忙期以外は少ないです」と返ってきます。そうではなく、「直近の3月、皆さん何時に帰られていましたか」と、時期と実績で聞いてください。答え方そのものが情報になります。

面接での確認のしかたは士業事務所の面接で聞いておく質問に詳しくまとめています。

辞めるだけが答えではない

会計事務所で身につけた力は、事務所の外でも通用します。

  • 事業会社の経理・財務 — 決算と税務の実務がそのまま活きる
  • 税理士法人の別部門 — 資産税・国際・M&Aなど、同じ業界内の別の仕事
  • 独立 — 顧問先を持つまでの助走をどう作るか

「会計事務所を辞める」と「この事務所を辞める」は違います。辞めたいのがどちらなのかで、選択肢の幅がまったく変わります。

よくある質問

Q. 何年続けてから辞めるべきですか。 A. 決まった年数はありません。ただし一通りの年間業務(月次から決算・申告まで)を経験しているかどうかは、次を選ぶときの説明のしやすさに関わります。1年に満たない場合は、なぜ短いのかを自分の言葉で説明できるかを先に整えてください。

Q. 所長に引き止められています。 A. 引き止めは、評価されている証拠でもあります。条件が改善されるなら残るのか、条件ではないから辞めるのか——ここは①〜④のどの型かで答えが決まります。型が分かっていれば、その場で迷いません。

Q. 辞めたいと思っていることを、周りに言ってもいいですか。 A. 決まるまでは事務所の中では言わないほうが無難です。狭い業界なので、話は思ったより早く伝わります。相談するなら、事務所の外の人に。

まとめ

  • 辞めたい理由は①量 ②人 ③中身 ④条件の4つの型。まず自分の型を一行で書く
  • ③中身は、同じような事務所に移っても変わらない。変えるのは客層と業務領域
  • 動く前に繁忙期のピークで判断していないか/言わずに諦めていないか/試験の時期/引き継ぎ/就業規則の5点を確認する
  • 面接では時期と実績で聞く(「残業はどのくらい」ではなく「直近の3月は何時に帰っていたか」)
  • 「会計事務所を辞める」と「この事務所を辞める」は別の話

同じことを何度も考えているなら、それはもう、考えるだけでは終わらない段階に来ています。型を決めるところから始めてください。

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