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税理士のセカンドキャリアは「辞め方」ではなく「渡し方」で決まる|60代以降に選べる5つの形と、10年前から準備できること

税理士のキャリアの話は、たいてい「合格してから、どう伸ばすか」で終わります。

その先——60代、70代に入ってから、この仕事とどう付き合うか——を扱ったものは、ほとんど見当たりません。ところが、実際に相談として持ち込まれるのはこちらのほうが多い。

「体力的にこのペースは続かない」「顧問先はまだ任されているが、いつまで続けるか決めていない」「事務所をどうするか、子どもに継ぐ気はない」。

一般の会社員のセカンドキャリアと決定的に違うのは、辞めるときに置いていくものがあることです。顧問先があり、資料があり、その顧問先の事情を知っているのは自分だけ、という状態になっています。だから、この仕事のセカンドキャリアは「いつ辞めるか」ではなく、「誰に、どう渡すか」から考えるほうがうまくいきます。

この記事は、選べる形を5つに整理し、いつから何を準備すればいいかをまとめたものです。

まず、どの入口から来たのかを分ける

同じ「セカンドキャリア」でも、置かれている条件が違います。

入口何が期限を決めているか最初に考えること
① 事務所・税理士法人に勤めている事務所の定年や、再雇用の条件定年後にその事務所に残れるのか、条件はどう変わるのか
② 自分で事務所を開いている期限は無い。自分で決めるしかない顧問先をどうするか。畳むのか、渡すのか
③ 企業の中にいる(経理・財務など)会社の定年資格をこの先どう使うか。外に出るのか、社内に残るのか

いちばん難しいのは②です。 誰も期限を決めてくれないため、「まだできる」と言い続けることができてしまいます。そして、渡す準備をしないまま体調を崩すと、顧問先が困ります。

自分がどの道を歩いてきたかを整理したい方は 税理士のキャリアパスは4本ある|「独立するかどうか」の前に決まっている分かれ道 を参照してください。

選べる形は、大きく5つ

① 非常勤・週数日で続ける

事務所や税理士法人に、週2〜3日、あるいは繁忙期だけという形で関わるものです。担当を持たず、レビューや相談対応に回るケースもあります。

  • 向いている人……実務は続けたいが、担当先を持ち続ける負荷は下ろしたい
  • 確かめること……報酬の決まり方、担当の有無、繁忙期の稼働、通勤の頻度

事務所の規模や体制によって、非常勤をどう扱うかはかなり違います。求人票の読み分けは 「会計事務所」「税理士事務所」「税理士法人」は何が違うのか|求人票を読み分けるための3つの軸 にまとめています。

② 顧問先を絞って続ける

自分の事務所を残したまま、顧問先の数を減らして続ける形です。長く付き合ってきた数件だけを手元に置き、新規は受けない。

  • 向いている人……仕事を完全に離れたくない、顧問先との関係を続けたい
  • 落とし穴……減らす顧問先の渡し先を決めないまま「新規を受けない」だけにすると、減らないまま年齢だけが進みます

「絞る」は、渡す相手を先に決めてはじめて実行できる選択です。ここが決まらないと、②は①〜⑤のどれにも移れません。

③ 事務所を承継する(渡す/譲り受ける)

後継者に引き継ぐ形です。相手は、事務所内の勤務税理士、他の事務所、税理士法人などが考えられます。

  • 時間がかかります。 顧問先への説明、担当の引き継ぎ、資料の移管があり、1回の決算期では終わりません
  • 顧問先には、渡す側から説明する。 顧問先にとっては「担当が変わる」ではなく「頼んでいた人が変わる」話です

顧問先の側がどう受け止めるかは 税理士を変えたいと思ったら|切り替えの手順と、いちばん傷が浅い時期 に書いています。渡す側こそ読んでおく価値があります。 何が不安になるのかが分かるためです。

④ 企業側へ移る

顧問ではなく、企業の中に入る形です。経理・財務の支援、非常勤の役員、社外の相談役など、関わり方はいくつかあります。

  • 向いている人……特定の業種に詳しい、あるいは長く見てきた顧問先の業界がある
  • 確かめること……求められているのが実務なのか、判断なのか、看板なのか

士業の転職には型があります。整理したものが 士業の転職は4つの型しかない|資格より先に見られている「規模・担当・体制」の話 です。年齢が上がってからの採用がどう決まるかは 40代・50代から士業事務所へ転職できるか|未経験採用が起きる事務所の条件と、求人票の見分け方 を参照してください。

⑤ 教える側・書く側に回る

受験指導、研修の講師、執筆、相談会の相談員など、実務の外で経験を使う形です。収入の柱にするのは簡単ではありませんが、①〜④と組み合わせている人が多い領域です。

セカンドキャリアで、実際に詰まるのは3か所

(1) 顧問先の引き継ぎ

いちばん時間がかかり、いちばん後回しにされます。

  • 顧問先ごとの経緯・口頭で決まっていること・注意点は、たいてい頭の中にしかありません
  • 資料の置き場と、過去の申告の綴りがそろっているか
  • 顧問先の担当者が交代していて、こちらの事情を説明する相手がいないことがあります

渡す予定が無くても、この整理は先にやっておく価値があります。 体調を崩したときに、そのまま引き継ぎ資料になります。

(2) 登録と、所属の扱い

働き方を変えると、税理士としての登録や所属の区分をどう扱うかという手続きの話が出てきます。非常勤になる、事務所を閉じる、企業に入るなど、形によって扱いが変わります。

⚠️ 具体的な要件と手続きは、所属する税理士会および日本税理士会連合会の案内で必ず確認してください。 この記事では要件を書きません。年度や区分によって扱いが違い、古い情報のまま進めると手戻りになるためです。

(3) 収入の落ち方

顧問先を半分にすると、報酬も半分になりますが、事務所の固定費は半分になりません。 家賃、ソフトの利用料、会費、保険。ここを先に見ておかないと、「減らしたのに楽にならない」という状態になります。

  • 固定費のうち、顧問先の数と連動しないものを書き出す
  • どこまで減らせるか(自宅へ移す、共同で借りる、ソフトの契約を見直す)
  • いつ、何件まで減らすかを年で区切る

いつから準備するか

時期やっておくこと
10年前顧問先ごとの記録を、頭の外に出し始める。後継者になりうる人がいるかを見る
5年前渡す先の候補と話をする。事務所の固定費を洗い出す
3年前顧問先に伝える順番を決める。決算期の重なりを見て、引き継ぎの時期を割り振る
1年前引き継ぐ顧問先ごとに、担当と時期を確定する
その年決算期の切れ目に合わせて渡す。期の途中で切り替えない

辞める時期を決めるときの考え方は、勤務の場合も自営の場合も共通する部分があります。会計事務所を辞めるなら、何月がいいのか|繁忙期・担当先の引き継ぎ・転職活動の時期から逆算する が参考になります。

他士業でも構図は似ています。社労士の場合は 社労士のキャリアパスは、資格を取ったあとの「登録区分」で分かれる にまとめました。

よくある質問

Q. 税理士に定年はありますか。

資格そのものに年齢の上限はありません。 ただし、事務所や税理士法人に勤めている場合は、その勤務先の定年や再雇用の制度が適用されます。自分で事務所を開いている場合は期限が無いため、自分で区切りを決めることになります。

Q. 顧問先を減らしたいのですが、どう伝えればいいですか。

渡す先を決めてから伝えるのが原則です。 「減らしたい」とだけ伝えると、顧問先は自分で次を探すことになり、引き継ぎの資料も渡せません。決算期の切れ目に合わせ、後任と一緒に説明するのがいちばん傷が浅い形です。

Q. 事務所を継いでくれる人がいません。

他の事務所や税理士法人に引き継ぐ形もあります。 顧問先の業種・規模・件数が相手の関心に合うかで話の進み方が変わります。時間がかかるため、「継ぐ人がいない」と分かった時点で動き始めるほうが選択肢が残ります。

Q. 60代から企業側へ移ることはできますか。

あります。 ただし、求められているのが実務なのか、判断なのか、その業界を知っていることなのかで、条件がかなり変わります。これまで見てきた業種と、その企業の課題が重なるかを先に確かめてください。

Q. 非常勤になると、報酬はどう決まりますか。

事務所によって大きく違います。 日数で決める形、担当する顧問先の数で決める形、繁忙期だけ別に決める形などがあります。担当を持つかどうかで負荷がまったく違うため、そこを先に確認してください。

Q. 働き方を変えると、登録の手続きは要りますか。

形によって扱いが変わります。 具体的な要件と手続きは、所属する税理士会および日本税理士会連合会の案内でご確認ください。 事務所を閉じる時期と手続きの時期がずれると手戻りになるため、日程を決める前に確認しておくことをおすすめします。

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本記事は、税理士・会計事務所で働く方のセカンドキャリアの考え方を一般的な観点から整理したものです(確認日:2026-09-18)。 税理士の登録・所属区分・各種届出に関する要件や手続きは、所属する税理士会および日本税理士会連合会の案内をご確認ください。事務所の承継、顧問先の引き継ぎ、報酬や契約の条件は個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、所属する会および専門家にご相談ください。

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