税理士を変えるとき、いちばん多い失敗は「先に今の契約を切ってしまうこと」です。次が決まる前に手を離すと、資料だけが手元にあって、誰も見ていない期間ができます。
決算や申告の期限は、契約の有無とは関係なくやってきます。変更そのものは珍しいことではありませんが、順番を間違えると実務が止まります。
この記事では、動く順番と、切り替えに向いた時期を整理します。
そもそも、変えたほうがよい場合とそうでない場合
変更で解決すること
- 業務の範囲が合っていない(記帳まで頼みたいのに、申告だけの契約になっている等)
- 連絡が返ってこない、相談ができない
- 事業の規模や業種が変わり、対応の経験が合わなくなった
- 料金と業務内容が釣り合っていない
変更では解決しないこと
- こちらが渡す資料が遅い、揃っていない
- 記帳の体制が社内に無い
- 「節税してくれない」という不満(できることには限りがあります)
後者を理由に変えると、相手が変わっても同じことが起きます。不満の中身が「相手側」なのか「渡し方」なのかを、先に切り分けてください。料金そのものへの疑問であれば、税理士の顧問料は何で決まるのかを先に読むと、比べる基準ができます。
順番は6つ
1. 契約書で解約予告の期間を確認する 2. 次の依頼先を探し、面談する 3. 引き継ぐ資料の範囲を確認する 4. 現在の税理士へ解約を伝える 5. 資料を返してもらう/新しい税理士へ渡す 6. 税務署等への届出(必要な場合)
1と2を、4より先にやります。ここが逆になると、空白期間ができます。
1. 解約予告の期間
顧問契約には解約の予告期間が定められていることが多い部分です。1か月前・3か月前など幅があり、書面での通知を求めている契約もあります。
「言った日から即終わる」わけではないため、切り替えたい時期から逆算してください。
2. 次を探す
面談で聞いておきたいのは、料金より先に業務範囲です。
- 月額に何が含まれるか(記帳、給与、申告、相談)
- 記帳をこちらでやるか、任せるか(→記帳代行はいくらかかるのか)
- 業種の経験
- 連絡の方法と、返信の目安
- 担当者は誰か(法人の場合、実際に見る人が別のことがあります)
事務所の形態によって、動き方が変わる部分があります(→会計事務所と税理士法人は何が違うのか)。
3. 引き継ぐ資料
ここが抜けやすいところです。返してもらうもの、受け取るものを先に一覧にしてください。
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 預けた原本 | 領収書、請求書、通帳の写し、契約書類 |
| 申告関係 | 確定申告書・決算書の控え、勘定科目内訳明細 |
| 届出の控え | 各種届出書の控え |
| 会計データ | 会計ソフトのデータ、または出力した帳簿 |
| 固定資産 | 固定資産台帳(忘れられやすい) |
会計データの引き継ぎは、ソフトが違うとそのまま移せないことがあります。新しい税理士に「どの形式で受け取れるか」を先に聞いておくと、二度手間になりません。
4. 伝える
理由を細かく説明する義務はありません。「社内の体制が変わったため」で足ります。
伝え方で気をつけること
- 契約書どおりの方法で通知する(書面指定なら書面で)
- 最後まで担当してもらう範囲を決める(例:進行中の決算はどちらがやるか)
- 未払いを残さない。精算が終わらないと、資料の返却が遅れることがあります
5〜6. 受け渡しと届出
税務代理権限証書の関係で、税務署への届出が必要になる場合があります。ここは新しい税理士が案内してくれる部分なので、面談のときに確認しておいてください。
いちばん傷が浅い時期
期の切り替わりに合わせるのが、いちばん整理が簡単です。
| 時期 | 向き不向き |
|---|---|
| 決算・申告が終わった直後 | 最も向いています。1年分がまとまっているため、引き継ぎが少なくて済みます |
| 期首(新しい事業年度の初め) | 向いています。新しい税理士が1年を通して見られます |
| 期の途中 | 可能ですが、帳簿が途中で切れます |
| 決算の直前・申告期限の直前 | 最も向きません。引き継ぎと期限が重なります |
| 年末調整・確定申告の繁忙期 | 受けてもらえないことがあります |
「もう限界」という状態で動くと、たいてい最も向かない時期に当たります。合わないと感じた時点で、次の決算が終わったら動くと決めておくほうが、実務が荒れません。繁忙期そのものの事情は士業事務所の繁忙期カレンダーにまとめています。
そもそも顧問が要るのか、から考える
変更ではなく、契約の形そのものを見直したほうが早いこともあります。
- 人の出入りも取引も少ない ── 申告だけをスポットで頼む形で足りることがあります
- 記帳を社内でやれるようになった ── 記帳代行を外す
- 規模が大きくなった ── むしろ範囲を広げる
いつ頼むか、どこから頼むかの整理は税理士に頼むのはいつからかにまとめています。「変える」と決める前に、「何を頼みたいのか」を1枚に書き出しておくと、面談が早く終わります。
よくある質問
Q. 途中で変えると、税務署から怪しまれますか。 A. 税理士の変更自体は通常の手続きです。変更の事実そのものが問題になるものではありません。
Q. 資料を返してくれない場合は。 A. まず契約書と精算の状況を確認してください。未払いがあると返却が止まることがあります。話がつかない場合は、税理士会の相談窓口などへの相談が経路になります。
Q. 新旧の税理士どうしで引き継いでもらえますか。 A. 直接やり取りしてもらえる場合もありますが、原則は依頼者が間に立ちます。資料の受け渡しは自分の手元を経由させたほうが、何が渡ったか把握できます。
Q. 顧問料を下げたいだけなら、変えるべきですか。 A. まず今の事務所に業務範囲の見直しを相談するほうが早いことがあります。範囲を減らせば金額も変わります。変更にも引き継ぎのコストがかかることを計算に入れてください。
まとめ
- 次を決めてから、今の契約を解約する。順番を逆にしない
- 解約予告の期間と通知方法を契約書で先に確認する
- 引き継ぐ資料は一覧にする。固定資産台帳と会計データは抜けやすい
- 向いている時期は、決算・申告が終わった直後か期首
- 繁忙期と決算直前は避ける
- 不満の中身が「渡し方」の側にある場合、変えても同じことが起きる
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本記事は、税理士の変更にあたって一般に必要となる手順を整理したものです(確認日:2026-08-21)。契約条件・引き継ぎの範囲・必要な届出は、契約内容や個々の状況によって異なり、制度も改正されることがあります。個別の税務判断や手続きについては、税理士へ直接ご確認ください。当サイトは情報を提供する立場であり、税務相談には応じられません。

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