「毎月は要らない。決算と申告のときだけ見てほしい。」
この相談は珍しくありません。そして、受ける事務所と受けない事務所にはっきり分かれます。 断られたときに「うちの規模では相手にされないのか」と受け取る方がいますが、多くの場合、理由はそこではありません。
この記事では、なぜ分かれるのか、費用が何で決まるのか、断られやすいケース、そして声をかける時期を整理します。
そもそも「決算のみ」とはどこからどこまでか
言葉の指す範囲が、依頼する側と受ける側でずれていることがあります。
| 呼び方 | 含まれることが多い範囲 |
|---|---|
| 決算のみ・スポット | 1年分の帳簿を締めて、決算書と申告書を作り、提出するまで |
| 記帳代行つき | 上記に加え、1年分の仕訳を入力するところから引き受ける |
| 顧問契約 | 期中の相談・チェック・面談を含み、月額で継続する |
「決算のみ」で見積もりを取るとき、いちばん金額を動かすのは、記帳が済んでいるかどうかです。 帳簿が最後まで付いている状態と、領収書の束を渡す状態では、事務所の作業量がまったく違います。記帳を外に出す場合の考え方は記帳代行の費用にまとめています。
受ける事務所と、受けない事務所の分かれ目
断る事務所が不親切なわけではありません。 事務所側から見ると、決算のみの依頼には、次のような事情があります。
- 1年分をまとめて短期間で処理することになる ── 期中に見ていれば分散できた作業が、決算期に集中します
- 中身の確認に時間がかかる ── 何がどう処理されているかを、一から追う必要があります
- 繁忙期に重なりやすい ── 依頼が来る時期が、事務所のいちばん忙しい時期と重なります(士業の繁忙期カレンダー)
- 責任だけは同じようにかかる ── 作成して提出する以上、確認の手を抜けません
したがって、受けている事務所は「その前提で体制を作っている」事務所です。 若手が独立して間もない事務所、記帳代行の仕組みを持つ事務所、クラウド会計に慣れた事務所などで受けやすい傾向があります。事務所の規模と方針で変わります(士業事務所のスタッフ人数が意味するもの)。
費用は何で決まるか
金額そのものは事務所によって幅がありますが、変動する要因は共通しています。
1. 記帳が済んでいるか ── ここが最大です。仕訳の入力から頼むなら、その分が上乗せされます 2. 年商・取引の量 ── 仕訳の本数が増えれば、確認の手間も増えます 3. 法人か個人か ── 法人の申告は作成する書類が多くなります 4. 消費税の申告が要るか ── 課税事業者かどうかで作業が変わります 5. 業種と、特殊な処理の有無 ── 在庫、複数拠点、補助金、外貨など 6. 申告期限までの残り日数 ── 期限直前の駆け込みは、受けてもらえたとしても割高になります
顧問契約と比べたときの相場観は税理士の顧問料の相場を参照してください。年間の総額で見ると、決算のみのほうが安くなるのが一般的です。 そのぶん、期中の相談は付いてきません。
「決算のみ」で足りる人/足りない人
足りることが多いのは、次のような場合です。
- 取引がシンプルで、自分で帳簿を最後まで付けられる
- 期中に判断が必要な場面がほとんどない(大きな設備投資や借入、組織の変更がない)
- 会計ソフトを使っていて、数字を自分で見る習慣がある
足りないことが多いのは、次のような場合です。
- 期中に相談したい論点が出る(役員報酬、借入、補助金、資産の購入など)
- 数字を見るのが決算のときだけになる ── 一年経ってから「その処理は前もって相談してほしかった」と言われる典型です
- 従業員が増えていく段階にある ── 給与・社会保険まわりの判断が増えます
決算のみは「安い顧問契約」ではありません。 期中の相談を自分で持つ、という選択です。そこを引き受けられるかどうかで決めてください。 頼む時期そのものの考え方は税理士に頼むタイミングにまとめています。
断られやすいケース
- 申告期限まで日が無い ── いちばん多い理由です
- 帳簿がまったく無く、資料も揃っていない ── 作業量が読めません
- 前年までの処理に不明点が多い ── 引き継ぎの確認に時間がかかります
- 繁忙期のど真ん中に連絡した ── 断られるというより、手が空いていません
- 毎年、別の事務所に頼んでいる ── 継続する前提が見えないと、優先度が下がります
依頼するなら、いつ声をかけるか
決算日の2〜3か月前が、多くの事務所にとって動きやすい時期です。
- 決算日が来る前なら、まだ打てる手が残っています
- 決算日を過ぎてからでは、確定した数字を整えるだけになります
- 申告期限の直前は、受けてもらえないことがあります
「決算が終わってから相談する」は、いちばん選択肢が少ない順番です。
事務所の探し方と、最初に聞くこと
問い合わせの段階で、次の4点を伝えると話が早く進みます。
- 法人か個人か、決算月はいつか
- 記帳が済んでいるか、使っている会計ソフトは何か
- 今回だけなのか、続けて頼みたいのか
- 今回とくに気になっている論点があるか
そのうえで、「決算のみで受けていただけますか」と最初に確認してください。受けていない事務所に時間をかけるより、受けている事務所を探すほうが早く済みます。 事務所の見極め方は士業事務所の選び方、税理士と他士業の役割の違いは税理士は何をしてくれるのかを参照してください。
よくある質問
Q. 顧問契約を前提に、決算だけからお試しできますか。 A. そのように受けている事務所はあります。 実際、決算を一度一緒にやると、期中に何を相談したいかがはっきりします。 問い合わせのときに「まず今回の決算からお願いしたい」と伝えてください。
Q. 今の税理士に顧問料を払っていますが、決算のみに切り替えられますか。 A. 契約内容によります。契約期間と解約の予告期間を確認してください。 切り替えの手順と時期は税理士を変えたいと思ったらにまとめています。
Q. 自分で申告してはいけませんか。 A. 法律上、ご自身で申告することはできます。 判断が必要な論点が少なく、帳簿を付けられているなら、選択肢として成立します。ただし、判断を誤ったときに気づけないという点は、費用と別に考えてください。
Q. 記帳を自分でやれば、いくらか安くなりますか。 A. 多くの事務所で安くなります。 ただし、入力の仕方が事務所の想定と違うと、直す手間で相殺されることがあります。 会計ソフトと勘定科目の使い方を、着手前に一度すり合わせてください。
Q. 税務調査が来たときは対応してもらえますか。 A. スポット契約の範囲外となることがあり、別料金となる場合もあります。契約時に必ず確認しておいてください。 ここは、顧問契約との差がはっきり出る部分です。
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本記事は、税理士へ決算・申告のみを依頼する場合の一般的な考え方を整理したものです(確認日:2026-08-25)。 対応の可否・費用・業務の範囲は事務所によって異なり、税務上の取り扱いは事業の内容および個別の事情によって異なります。具体的な判断は、税理士および所轄の税務署にご確認ください。 本記事は特定の処理を推奨するものではありません。

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