社労士の見積もりを2つ並べて、月額だけを比べても差は分かりません。同じ「顧問料 月3万円」でも、片方には給与計算が入っていて、もう片方は入っていない——ということが普通に起きるからです。
顧問契約でいちばん揉めやすいのは金額ではなく、「これは顧問料の範囲ですか」という確認を、契約のときにしていなかったことです。
この記事では、社労士の業務が顧問料に含まれやすいものと、別料金になりやすいものにどう分かれるのかを整理します。
社労士の仕事は、大きく3つに分かれる
社労士の業務は、慣例的に1号業務・2号業務・3号業務と呼ばれる区分で語られます。
| 区分 | 中身 | 誰でもできるか |
|---|---|---|
| 1号業務 | 労働・社会保険の手続きの代行(入退社、算定、年度更新など) | 社労士の独占業務とされています |
| 2号業務 | 労働社会保険に関する帳簿書類の作成(就業規則、労働者名簿など) | 同上 |
| 3号業務 | 相談・指導(労務相談、制度設計など) | 独占ではありません |
顧問契約の中心は1号・2号で、月額に何がどこまで入るかは事務所ごとに決めています。
顧問料に含まれることが多いもの/別料金になりやすいもの
| 業務 | 顧問料に含まれやすいか | 補足 |
|---|---|---|
| 入退社の手続き(資格取得・喪失) | 含まれることが多い | ただし件数の上限が設定されている場合があります |
| 算定基礎届・労働保険の年度更新 | 含まれることが多い | 「年1回の定例業務」として扱われます |
| 日常の労務相談 | 含まれることが多い | 方法(メール・電話・訪問)と回数で差が出ます |
| 給与計算 | 別料金が多い | 人数課金になりやすい部分です |
| 就業規則の作成・改定 | 別料金が多い | 新規作成は特に別建てになりがちです |
| 助成金の申請 | 別料金(成功報酬)が多い | 報酬の割合を必ず確認 |
| 労働基準監督署の調査対応・立会い | 別料金のことがある | 頻度は低いが、必要になると大きい |
| 年金・離職票など個別の手続き | 含む/含まないが分かれる | 退職者が出た月に効いてきます |
この表は「よくある分かれ方」であって、決まりではありません。事務所ごとに違うため、見積もりを見るときは、この行を1つずつ指さして確認するのが確実です。
月額そのものの相場観は社労士の顧問料はどう決まるのかにまとめています。
契約書で確認したい6か所
「聞いていない」が起きるのは、たいていこの6つのどれかです。
1. 業務範囲の列挙 ── 「労働社会保険手続き一式」とだけ書かれている場合、何が一式なのかを別紙か口頭で確認する 2. 料金の基準になる人数 ── 従業員数で決まることが多く、増えたときにいつ改定されるのか(都度/年1回/◯名ごと) 3. 相談の方法と回数 ── メールのみか、訪問が何回あるか。「相談無制限」の実際の運用 4. 給与計算の有無と、含む場合の件数 ── 人数が増えたときの単価 5. スポット業務の単価表 ── 就業規則の改定、助成金、調査対応がいくらになるかを先に見ておく 6. 契約期間と解約の予告期間 ── 自動更新か。解約は何か月前に伝えるか
特に2番目は、後から金額が動く原因になります。採用が続く時期に入ると、契約時の人数と実態がずれます。
事務所そのものの選び方は士業事務所の選び方に整理しました。
顧問にするか、スポットで頼むか
全員が顧問契約を必要とするわけではありません。分かれ目はおおよそ次のあたりです。
スポットで足りることが多い場合
- 従業員がいない、または家族だけ
- 手続きが年に数回しか発生しない
- 就業規則を1度作れば、当面は改定の予定がない
顧問が向く場合
- 人の出入りがある(採用・退職が定期的に発生する)
- 相談したいことが不定期に出る(残業、休職、ハラスメント、雇用契約の変更)
- 給与計算まで任せたい
- 労務のルールを整えたい段階にある
「相談したいときにすぐ聞ける相手がいるかどうか」が、顧問料の実質的な中身だと考えると判断しやすくなります。就業規則が必要になる場面は就業規則と社労士にまとめています。
気をつけたい話し方
「助成金が取れるので顧問料は実質無料になります」という説明を受けることがあります。
- 助成金は、要件を満たした場合に支給されるものです。受給できるかどうかは事前には確定しません
- 顧問料は毎月発生し、助成金は一度きりであることが多い
- 成功報酬の割合が受給額に対して高いことがあります
否定すべき話ではありませんが、「顧問料」と「助成金の成功報酬」は分けて見積もってもらってください。
他の士業との比較
顧問契約という形は、税理士にもあります。ただし中身の分かれ方は違います。
- 税理士 ── 記帳・申告が中心。税理士の顧問料は何で決まるのか
- 行政書士 ── 顧問より案件ごとの依頼が中心。行政書士に頼むといくらかかるのか
「どの士業に頼む話なのか」から迷っている場合は、扱う分野が重ならない部分を先に切り分けると早く進みます。
よくある質問
Q. 顧問契約を結ばずに、手続きだけ頼めますか。 A. スポットで受けている事務所は多くあります。ただし単発の料金は割高になりやすいため、回数が増えるなら顧問のほうが結果的に安くなることがあります。
Q. 従業員が増えたら、顧問料は上がりますか。 A. 人数を基準にしている事務所では上がります。改定のタイミング(都度か、年1回か)は契約書の記載によります。契約時に確認しておくべき点です。
Q. 相談は何回までできますか。 A. 「無制限」と書かれていても、方法(メール中心か訪問か)で実態が変わります。回数ではなく、返信までの目安時間を聞くほうが実態に近い答えが得られます。
Q. 途中で事務所を変えられますか。 A. 可能ですが、解約の予告期間が定められていることが多いところです。また、手続きの引き継ぎに時間がかかります。変更を考える場合は、繁忙期を避けるほうが移行が滑らかです。
まとめ
- 社労士の業務は1号(手続き)・2号(書類作成)・3号(相談)に分かれる
- 顧問料に含まれやすいのは、入退社の手続き・年1回の定例業務・日常の相談
- 給与計算・就業規則の新規作成・助成金・調査対応は、別料金になりやすい
- 契約書は業務範囲/人数の基準/相談の方法/給与計算/スポット単価/解約予告の6か所
- 人の出入りが無ければ、スポットで足りることもある
- 「助成金で実質無料」は、顧問料と成功報酬を分けて見積もってもらう
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本記事は、社労士の顧問契約に一般に見られる構成を整理したものです(確認日:2026-08-21)。業務範囲・料金体系・改定の条件は事務所ごとに異なり、法令や制度は改正されることがあります。契約前に、依頼を検討している社会保険労務士へ直接ご確認ください。個別の労務判断については、専門家にご相談ください。

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